第9回コラム【合同会社】代表社員の地位のみの辞任

代表社員の地位のみの辞任手続き


合同会社が選択されることが年々増えています。

こんにちは!
大田区は大岡山で司法書士と行政書士をやっています東郷祥太です。

ここ何年かで会社の形態として合同会社が選択されることが増えています。
東京商工リサーチの調べによると、2019年に設立された新設法人のうち実に4社に1社が合同会社を選択したというデータが出ています。

2019年(1-12月)に全国で設立された法人(以下、新設法人)は13万1,292社(前年比1.7%増)で、2年ぶりに前年を上回った。法人格では、トップが「株式会社」の8万8,724社(同0.9%増)、次いで、「合同会社」が3万424社(同5.5%増)だった。初めて合同会社が3万社台に乗せ、2019年の新設法人はおよそ4社に1社(構成比23.1%)が「合同会社」を選択した。

東京商工リサーチ【2019年「合同会社」の新設法人調査】http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200618_03.html


以前に書いた会社設立のコラムでも書きましたが、合同会社は所有と経営が分離していない形態、つまりは社員となるものが出資をし、そのまま経営も行うというところに特徴があります。


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社員は、定款に別段の定めがない限り、各自業務執行社員となります。
また業務執行社員は、原則として、各自が合同会社を代表します。
しかし、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務執行社員の中から代表社員を定めることも可能です。

以上が今回のコラムの前置きです。


設立のお手伝いをした依頼者様からの連絡

ある日以前に設立登記の担当をした合同会社の方から連絡がありました。
新しい依頼とのことで、内容を伺ったところ
「代表社員であるBを平社員にしたい」
とのこと。

こちらの合同会社はAさん、Bさん、Cさんの合計3名という社員構成。
業務執行社員はその全員です。

また定款には代表社員について、

・代表社員を1名以上置く
・総社員の過半数の同意を持ってこれを選任及び解任

という規定が置かれています。

また定款の附則にて以下のように定められておりました。

当会社の最初の代表社員は、A及びBの2名とする。

ですので、依頼の内容をまとめますと

現状が、

代表社員 A
代表社員 B
業務執行社員 C

となっている社員の構成を

代表社員 A
業務執行社員 B
業務執行社員 C

に変更したいというご依頼でした。

どういう手続きを取って何を提出するべきなのか

合同会社において代表がその地位のみを辞任するというのはあまり多いことではないように思います。
その地位のみだけではなく、退社という形を取って社員自体から外れるというのが一般的でしょう。

私自身聞いたことが無い手続きでしたので、手持ちの書籍を調べてみました。



すると商業登記ハンドブックに代表社員の退任に関して以下の記載があり、どうやらこれが手続きの道しるべになりそうだと。

添付書面

・定款で定められた代表社員の辞任の場合には、辞任についての総社員の同意書

・定款に基づき互選された代表社員の辞任又は解任の場合には、定款のほか、辞任届又は解任につき過半数の一致を証する書面

商事法務~商業登記ハンドブック第3版 p670 松井信憲著


ここでもう1つ疑問が湧きました。
定款には確かに代表社員の互選規定がある。
ただ一方で現在登記されている2名の代表社員は「最初の代表社員」として定款の附則で定められている。

この場合は上記2つのどちらにあたるのか。。。

これは照会しなければ…。

私の考えとしては定款で代表社員として定められているわけではなく、あくまで附則で最初の代表社員として定められているだけなので、2つ目が正しいのだろうという考えでした。
ただ厳密には定款に基づく社員の互選があったわけではないのでそこが悩みどころ。。。

というわけでもうこれはちゃんと照会をかけた上で申請をしようと思いまして、法務局宛に照会をかけました。

照会内容としては以下の通りです。

 商業登記ハンドブック第3版p670には添付書面に関して”定款に基づき互選された代表社員の辞任又は解任の場合には、定款のほか、辞任届又は解任につき過半数の一致を証する書面”とあります。
 当職としてはそれに倣い定款と辞任届を添付書面として提出しようと考えていますが、互選の規定が定款にあるものの、附則に「最初の代表社員」として指名されている者が、代表社員の地位のみを辞任する際も同様に考えて良いか疑義があるため照会いたします。



次の日に法務局から返答がありました。
結論としては「ご意見の通り然るべく」。

そしてその理由として伝えられた内容を要約すると

「確かに定款の附則で定められた代表社員は、定款の定めに基づく社員の互選によって定められたとは言えないかもしれませんが、設立時の定款には社員全員の押印がありますので、その定款を社員の互選書として捉えます。ですので、挙げていただいたような手続きで問題無いと考えます」

とのこと。

確かにそうですね。
そして登記官さんは続けました。

「それにしても珍しいパターンですね。通常は代表社員が辞める場合は退社ですもんね」

やっぱりそうですよね。
おかげでひとつ勉強になり、クライアント様には感謝です。




まとめ。

定款の定めに基づいて互選された代表社員の代表の地位のみの辞任登記は、例えそれが定款附則で定められた代表社員であっても定款と辞任届の提出で(私の確認した法務局では)大丈夫でした。

もちろん、辞任届には登記所に提出済みの代表印を押印。
そうでない場合は実印+印鑑証明書です。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

司法書士・行政書士事務所 Wille

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