第7回コラム【続・会社を作ろう!】株式会社を設立する際の手続き

皆様こんにちは。大田区の司法書士・行政書士の東郷です。
前回のコラムでは、会社とは何か、法人とは何かについて書きました。

https://officewille.com/company1/

今回のコラムではいよいよ会社設立の具体的な手続きの流れについて書きたいと思います。
ただ会社設立の手続きについては既にたくさんのブログやサイトで紹介されていますので、私は具体例を挙げて出来るだけ皆さんに興味を持ってもらえる形で書いていきます。

私の大好きなスタジオジブリが、作品のフリー素材を公式で提供開始してくれたことがありますので、そんなフリー素材の画像を織り交ぜながら。

皆様是非、木村弓さんの「いつも何度でも」を聞きながらのんびり読んでいただければと思います。

湯婆婆、株式会社作るってよ。


1.まずは定款を作成しましょう。



あるところに八百万の神々が日々の疲れを癒しに来る風呂屋さんがありました。
湯婆婆という魔女の経営する「油屋」です。

湯婆婆は今まで順調に油屋の経営してきました。
ただずっと個人事業主としての経営でした。
しかしある日、今後さらに事業を拡大するならば会社にした方がいいというアドバイスを使いのハクから受け、思い切って会社を立ち上げることにしました。

いくつからある会社の形態から株式会社を選択しましたが、そこから何をすればいいのかわかりません。
ただ色々と調べたところどうやら「定款」というものを作らなければならないということがわかりました。

湯婆婆の疑問その1

 Q-1. 定款とは一体何だい?
 A-1. 定款とは会社の根本となるルールを紙や電子媒体に記録したものです。



定款には会社の本店所在地や、目的、役員の構成など、基本的な事項が定められています。
会社は定款の目的として定められた事項でのみ、法人としての活動が認められると民法で定められています。

(法人の能力)
第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。


以上のことからも定款は会社の活動にとってとても大切なものです。
ただ作成に関しての細かいルールや注意事項に関して書き始めると、いつまで経っても湯婆婆の会社が設立されないので、そこは別コラムに譲ります。



さて、湯婆婆は以下の通りに目的を定めました。

【目的】
1.公衆浴場の経営
2.遊技場、レストラン等の飲食店の経営
3.リラクゼーション業「手技を用いて心身の緊張を弛緩させるための施術を行う事業所」の経営
4.畜産業
5.和菓子及び洋菓子の製造
6.前各号に付帯関連する一切の事業


商号(会社名)は「油屋株式会社」にしたようです。


湯婆婆はその他必要な事項を定めるにあたって、ひとつ悩みがありました。
果たして取締役は自分だけでいいのだろうかということです。

もちろん、自分が出資をして自分が代表取締役となり、経営権に関しては絶対的に自分が握りたいという気持ちがありましたが、何かのときのために取締役を一人くらいは置いてもいいのではないかと。

一人部屋で悩む湯婆婆。
すると突然小さな女の子が部屋に飛び込んできました。ノックも無しに。

女の子は湯婆婆の前に立つといきなりこう言いました。



「ここで取締役として働かせてください!!!」



見たところ小学生程度の年齢のようです。
どうして会社を作ることを知っているのか謎でしたが、ちょうど悩んでいたところだったので、安易にこの子を取締役にしてしまえばいいのではないかと、そんなことを湯婆婆は考えました。


しかしそこでふと疑問が湧きました。
こんな小さな子供を取締役にしていいのだろうかと。

湯婆婆の疑問その2

Q-2. 未成年であっても取締役に就任できるのかい?
A-2. 条件が整えば未成年であっても取締役に就任することができます。



会社法の第331条1項には取締役の欠格事由が定められています。
例えば成年被後見人や被保佐人は取締役にはなれません。
また法人が取締役になることもできないと定められています。
(※成年被後見人もしくは被保佐人であることが取締役の欠格事由となっているのは現行の会社法です。ここは令和3年3月1日施行予定の改正会社法にて変更され、一定の手続を経れば就任されるという規定が新しく置かれます。)

しかし、未成年に関しては取締役になれないという定めが無いのです。
ですのでまず未成年であっても取締役に就任することができるという前提で話を進めます。

取締役に未成年が就任するための条件とは?

未成年でも取締役に就任することができるというのは、もちろん未成年であれば誰でも就任できるという意味ではありません。
取締役は就任すると会社に対して忠実に業務を行う義務等が発生します。
まずはその義務を理解できなければなりません。
そのためには有効に意思表示をすることができる能力(意思能力と言います)が必要とされていますが、日本では一般的にこの意思能力を有していると認められるのは10歳以上です。
ですのでまずは10歳以上でなければならないことが一つ目の条件として挙げられます。
ただ取締役として業務を行うということは、単に意思能力があるだけでは足りず、経営についての判断等、高度なスキルが要求される上、先日した義務についてもしっかりと理解をしなければなりません。
そういったことを考慮すると現実的に小学生では難しいところではないでしょうか。
もちろん個人差があるとは思います。

次に用意しなければならない書類の点から考えます。
会社の機関をどのように設計するかによって、取締役に就任する際に提出しなければならない書類が変わります。


取締役会を設置していない会社の取締役が就任する際にはその就任承諾書に実印を押し、その印鑑証明書が必要です。
ただし印鑑登録が可能となる年齢は満15歳以上ですので、もし会社に取締役会が設置していなければ、15歳未満の未成年が取締役に就任することはできないということです。

最後に親権者の同意です。
未成年者が法律行為を行うためには法定代理人の同意が必要であると、民法第5条に定められています。



さて、以上のことからどうやらこの女の子が取締役に就任することは難しそうです。
どう見ても10歳くらいにしか見えません。
しかもこの子の親は湯婆婆の経営する飲食店で勝手にお店の料理を食べて豚になったのです。
豚では親権者として同意をすることはできません。


とりあえず湯婆婆はその子を従業員として働かせることにして、名前を書かせることにしました。
労働基準法を無視した大胆な採用ですがそこは目をつぶってください。

荻野千尋と書かれた体と同じようにヒョロヒョロの文字を見て湯婆婆は言いました。

「フン、千尋というのかい?贅沢な名前だね。…今からお前の名前は千だ」
「でもおばあちゃん、取締役は本名じゃないと登記できないんじゃない?」

湯婆婆の疑問その3

Q-3. 取締役が本名以外で登記することはできるのかい?
A-3. 原則は本名ですが、唯一の例外として旧姓での登記が認められています。



取締役はその氏名を原則として本名でなければ登記できません。
ただ本名以外で唯一例外として認められているのが、旧姓での登記です。
厳密には旧姓のみ登記されるわけではなく、併記されるというのが正しい表現です。
実際には以下のような登記記録になります。

役員に関する事項

 取締役 大田太郎(東調布太郎)

就任日
登記日

上記表のカッコ内が旧姓です。


湯婆婆は思いました。
(なんだい。本名じゃないと駄目なのかい。じゃあハクも駄目だね)

取締役にこだわる千尋のことは無視してそんなことを考えていました。

2.定款に公証役場で認証を受けよう。

湯婆婆は定款を完成させました。
出資をするのも経営を行うのも湯婆婆一人とすることに決めたようです。

さて、今度はどうやらその完成した定款を公証役場に持って行って認証を受けなければならいようです。

定款の認証とは簡単に言うと、
「その定款が正しい手続きによって作成されたということを公証人に証明してもらうこと」
です。

公証役場はどこの公証役場でもいいわけではありません。
設立しようとする株式会社の本店所在地がある都道府県内の公証役場でしか認証はできないことになっています。
例えば私は東京都の株式会社を設立する場合は大田区の蒲田公証役場を利用することが多いですが、神奈川県の株式会社を設立するとなれば、川崎市の溝ノ口公証役場を利用しています。
同じ都道府県内であれば、区や市などはどこであっても都道府県内の公証役場が利用可能です。

例えば都内に本店所在地を置こうとする株式会社が、この管轄を無視して東京都以外の公証役場で認証を受けた場合、その認証は無効となります。
定款の認証についてはどの公証役場でも事前に定款案を公証役場にFAXやメールで送付し、その内容の確認を取ってもらいます。
そのため管轄外の公証役場において認証が行わるということは考えにくいですが、注意しておきましょう。

なお、定款は【紙の定款】と【電子定款】どちらでも作成可能です。
【紙の定款】で作成した場合には公証人報酬の他に印紙代として4万円がかかりますが、【電子定款】で作成をするとこの印紙代がかかりません。
電子定款を選択するためには発起人全員が定款に電子署名をする、もしくは定款作成代理人が電子署名をする必要があります。

これまで定款の作成とその認証について長々と書いてきました。
何故これほどまでにボリュームを割いて説明をするかというと、定款が会社にとって非常に重要なものであるからです。

法人は定款に記載された目的の範囲内でのみ、法人としての活動が認められることは先述した通りですが、その他機関設計や役員の員数、それに株主総会での決議要件などについても定款に定めたルールに則って会社を運営していくことになります。

ただ作成するだけではダメで、それについて公証人から認証を受けなければならないという点も、定款がいかに重要なものであるかを物語っていると言えるでしょう。

さて、公証役場が本当に油屋の近くにあるのかどうかはわかりませんが、湯婆婆は認証を受けた定款を無事に手に入れたようです。

ちょっと寄り道:合同会社の定款には何故認証が不要なのか
株式会社の定款には必ず認証が必要であるのに対して、合同会社の定款にはその認証は不要です。

 

実は株式会社は「所有と経営の分離」を想定しています。
つまり会社を所有しているのは株主であり、経営をしているのは取締役であるというすみ分けがされた会社形態であるということです。
現在日本の中小企業では、出資をした株主が取締役を兼ねていることが多いのでどうもイメージが湧きにくいかもしれませんが、例えばAという人物が株主と取締役(代表取締役)を兼ねているような株式会社であっても、株主(会社所有者)としてのAと、取締役(会社経営者)としてのA、両方がいるというイメージです。

一方で最近増えてきている合同会社ですが、こちらは所有と経営が分かれていない会社形態です。
設立時には出資をした者(社員)が全員で定款を作成し、その内容については社員全員が同意をします。
そしてそのまま社員が会社を経営します。
また定款を変更や、社員が出入りをする際には同様に社員全員の同意が必要です。
所有=経営が合同会社を含めた持分会社の特徴です。

さてどちらの形態で所有者と経営者間での紛争が起こりやすいかは一目瞭然ですね。
そもそも合同会社の所有者と経営者は同一人物なのですから。

株式会社では後日紛争が起きたような場合に備えて、一番最初に作った定款(原子定款)については認証を必要としているのです。
確認が取れる定款がそもそも無いようなことは困りますし、仮にあったとしてもそれが改ざんされているような物ではやはり困る。
ですので公証役場において、公証人がしっかりと認証をした上で、その原本も公証役場において一定期間保管されるという仕組みが株式会社には必要とされるのです。



3.代表社印を作成しよう。

脱ハンコ社会が何かと話題に上がっている昨今ですが、現状の法律では以下のような規定があります。
商業登記法第20条です。


(印鑑の提出)
第20条

1 登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。

2項以下略


登記の申請書に押印すべき者とは通常の株式会社であれば代表取締役を指します。
ここであらかじめという表現がされていますが、株式会社の設立登記申請に関しては、その設立登記申請と同時に提出すればオッケーです。

具体的には印鑑届出書という書類に代表印として使用する印鑑を押印して、その他必要な事項を記入して法務局に提出します。

湯婆婆の疑問その4

Q-4. 代表印はどんなものでもいいんだろ?
A-4. いいえ。規則でちゃんと決まりがあります。



商業登記規則第9条に会社の代表印についての決まりがあります。

(印鑑の提出等)
第9条

3 印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。

4 印鑑は照合に適するものでなければならない

3項の規定は印鑑のサイズについてです。
小さすぎてもダメ、大きすぎてもダメです。

4項に関しては抽象的な規定ではあります。
照合とは照らし合わせて確かめることです。
法務局は設立時(もしくは印鑑の変更時)に提出された印鑑の印影をデータとして持つことになります。
そして、例えば会社を移転したり、役員を変更した際に申請する登記の申請書(専門家に依頼をする場合は委任状)には代表印を押印しなければなりません。
登記官は提出された申請書にある印影と法務局の持っている印影のデータを照合することで、確かにその会社の代表者から申請があったものとして扱われるわけです。

ですので例えば押す力などによって印影が変わってしまうようなものや経年劣化によって印影が変わってしまうもの、シャチハタやゴム印などは照合に適しているとは言えません。

また非常にシンプルで、誰でも同じものが作れてしまうようなものもまた照合に適しているとは言えません。

以上の2つの要件を満たすのであれば、代表印として使用することができます。
個人の実印を会社の代表印として使用することもできます。
今はインターネットで代表印や会社印(角印)、それと銀行印のセット販売なども多くあり、それを利用されている方も多いですね。

さて湯婆婆ですが、たまたまハクの体から印鑑が出てきたようなので、それを千尋に持ってこさせて会社の代表印として使用することにしました。



3.その他の設立登記のために必要な書類を揃えよう。

その他にもいくつか設立登記に必要な書類があります。

株主が何人いて、取締役が何人いるか、また会社の機関設計がどうなるか等によって必要となる書類は大きく変わります。
今回のコラムでは手続きの流れに関してのものですので、必要な書類に関しては今までもあまり細かくは触れておりません。
そして必要な書類に関してはここでも細かい解説は抜きにして、一番スタンダードな形で会社を設立した場合に必要となる書類の例を列挙するに留めたいと思います。

1.設立登記申請書(印紙用台紙と綴りにしたもの)
2.認証済みの定款
3.就任承諾書
4.印鑑証明書
5.本店所在地決定書
6.払込みがあったことを証明する書面
7.印鑑届出書
8.印鑑カード交付申請書
9.委任状 ※専門家に依頼する場合
10.印鑑カード返送用のレターパック等

原本還付をしたい書類がある場合はその書類をコピーした上で、その書類が原本と相違ないことの記載をした上で、申請書に押した代表印を押印する必要があります。
原本還付書類が多い場合は以下のような表紙を作成し、名前の横に押印、そして各書類をホチキス等で綴じた上でそれぞれに契印する形でも可能です。

4.いよいよ設立登記申請です。

設立登記に必要な書類が揃ったので、湯婆婆はやっと設立登記の申請ができると法務局へ向かいました。
申請は会社の本店住所地を管轄する法務局において行います。

書類を直接窓口に持参して申請することもできますし、郵送での申請も可能です。
また環境が整っていればオンライン申請することもできます。

直接窓口で申請をする場合、原本還付したい書類があれば内容を確認後、その場で還付を受けられます。

申請書を提出する際に忘れてはいけないのが収入印紙を購入し、申請書と綴った印紙用の台紙に貼付することです。
株式会社の設立登記にかかる登録免許税は以下のように算出します。

資本金の額 × 7/1000(0.7%)
※これによって計算した税額が15万円に満たないときは、申請件数一件につき15万円)

株式会社の設立登記にかかる登録免許税は15万円ということを聞いたことがある方がいるかもしれませんが、資本金が約2200万円超でない限り、この計算によって出る数字が15万円を超えないので、そう言われているのです。

結果として資本金の額が100万円であっても、1000万円であっても登録免許税は15万円です。

カオナシのばらまいた砂金で懐が温かくなっていた湯婆婆は15万円をポーンと支払って印紙を購入し、台紙に貼りました。
そして申請書と一緒に綴じ、その綴じ目にしっかりと契印することも忘れなかったようです。

窓口に申請書を提出したところ、簡単な内容確認後に一枚の紙を渡されました。
登記の完了予定日が記載されているようです。
また【ご留意いただく事項】として以下のような記載がありました。

 書類に不備がある場合は、お知らせいただいた連絡先にこちらからお電話いたします(8:30~17:15の間)が、登記が完了した旨の連絡は致しておりませんので、ご了承ください。

そうなんです。登記が完了しても連絡が来ないのです。むしろ問題があるときにだけ連絡が来るのです。
ですので、私は法務局から連絡があるといつもドキドキします。
簡単な確認だったりすることも多いのですが、冷や汗の出る瞬間です。

管轄の法務局にもよるとは思いますが、完了予定日として記載されているのは1~2週間後の日付です。
ただし株式会社と合同会社の設立登記に関しては、平成30年3月12日から法務省において”原則として申請から3日以内に完了できるようにする取組”がされています。
これは会社の設立登記のファストトラック化という取組です。

平成30年2月
 
「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定,平成28年5月20日改定)を踏まえて定められた「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」(平成28年10月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において,平成29年度中に,会社の設立登記を優先的に処理(ファストトラック化)するようにし,次期登記情報システムの機能を活用した事件処理の効率化の取組等と併せて,原則として申請から3日以内に完了(※)できるようにする取組を行うとされました。

  これを受けて,平成30年3月12日(月)から,株式会社及び合同会社の設立登記について,ファストトラック化を開始しますので,お知らせします。

※ 申請の受付日の翌日(オンライン申請において別送書類がある場合には書面の全部が登記所に到達した日の翌日)から起算して3執務日目までに完了。
なお,登記申請件数の多い時期等を除きます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00110.html



ですので令和2年10月現在、合同会社と株式会社の設立登記申請に限っては、知らされた登記完了予定日の記載が1週間後であっても、それより前に完了することがほとんどです。
もちろん不備がないことが条件ですが。

湯婆婆の会社もしっかり準備した甲斐があって、申請2日後に無事設立されました!
今後は会社組織として規模を拡大し、より多くの神様たちを癒していくことでしょう。



最後に:専門家に会社設立の手続きを依頼するメリットとは?

株式会社を設立するための手続きを一通り書いていきましたがいかがでしたでしょうか?
これを読んでいただいて、自分でもできそうだと思った方、面倒くさいなぁと思った方、様々だと思います。

会社を設立する際には司法書士など専門家に依頼する場合が多くあります。
実際に当事務所でも毎月のように起業家の方から会社設立の依頼をいただいております。

専門家に依頼する場合、報酬が発生します。
それでもなお専門家に依頼するメリットがあるのでしょうか?
最後にその辺りのことに触れてみようと思います。

自分のやりたい業務を前提に、法令に従った定款の作成ができる。

定款がとても大切なものであることは先述しました。
インターネットが幅広く普及し様々なサイトが溢れている中で、定款のひな形がダウンロードできるようなサイトも多く見受けられます。
ただ、一言に株式会社と言っても出資者の数、出資される額やその内容、役員の構成人数や機関設計によって十人十色です。
ひな形をダウンロードし、必要箇所を修正すれば確かに公証役場での認証は受けられるかもしれません。
そして認証が受けられれば登記も可能でしょう。

ただし、公証人は定款を認証する際にその会社の実態や今後の事業についてまでは考慮してくれません。
そのため設立した後に自分がやろうと思っていた事業ができず、やむを得ず作成したばかりの定款変更をすることになったり、場合によっては登記の内容も変更しなければならなくなるようなこともあるでしょう。

行う事業によっては行政の許認可を受けなければならないような場合も出て来ます。
例えば飲食店を開業する、古物商許可を取得するといったような場合です。

専門家に依頼する場合には、法的なリスクが限りなく低く、自分の会社に合った定款の作成が可能です。
場合によってはその後に必要な許認可等の取得も依頼ができるというメリットもあります。

定款の印紙代4万円が節約できる。

司法書士や行政書士に定款作成を依頼する場合、定款はほぼ電子定款として作成されます。
司法書士、行政書士は定款作成代理人として、作成した定款に電子署名をすることができるからです。

もし専門家を通さないで電子定款を作成したい場合は、発起人(出資者)が全員でその電子定款に電子署名をしなければなりません。
今後電子署名が広く利用されるようになり、誰もが電子署名をできる環境になればそういうことも増えるのかもしれませんが、現状は電子署名がまだ広く普及しているとは言えず、また電子定款作成のために電子署名ができる環境を整えるというのもあまり現実的ではないでしょう。

そして電子定款で作成すると印紙代4万円がかからないというメリットがあります。
専門家に依頼するメリットのひとつであると言えるでしょう。

作業にかかるはずだった時間を別のことに使うことができる。

もしご自身で会社設立の手続きをすることになれば、それなりの時間を割かなければなりません。
まず単純に書類を作成するための時間がかかります。
その後公証役場とのやり取りをして予約をし、実際に足を運んで(テレビ電話で対応可能な公証役場もありますが)定款の認証を受け、その後登記申請。
場合によっては法務局から書類の修正(補正)の連絡があってまた法務局に足を運んで…。
という具合に、多くの時間をその設立手続きのために割かなければならなくなる可能性があります。

そういうことも好きで自分でやりたいという経営者の方も確かにいるでしょうし、そういった方は楽しみながらできると思いますのでご自身でされてもいいでしょう。
ただ起業される方の大半は、その他にも多くやらなければならないことを抱えているのが通常です。
事務所の契約をしたり、挨拶状を作成したり、場合によっては直接開業の挨拶に回ったり、そういうことの準備も含めて時間がいくらあっても足りないという方が多いはずです。

私が設立の業務終了後に「頼んで良かった」と言っていただける場合、やはりこの点にメリットを感じていらっしゃるクライアントさんが多いように思います。
印鑑証明書など最低限の書類を準備し、事業内容について打ち合わせをすればあとは設立の手続き以外のことに時間を使うことができるというのは、忙しい経営者の方にとって大きなメリットです。

また何度も会社設立に関わっている専門家であれば、書類作成もその申請手続きも迅速に行うことができます。
自身で行う場合には、色々調べながらやるため時間がかかってしまうことも出て来るかと思いますが、なるべく早く設立したいような場合にはやはり専門家に依頼していただくのがいいでしょう。

以上、私の思う専門家に会社設立手続きを依頼する場合のメリットについて書きました。
自分でやるか頼むか悩んでいる方の参考になれば幸いです。


ありがたいことに当事務所では多くの方から会社設立の依頼をいただいております。
これから経営者として頑張ろうとしている方たちの前向きな気持ちに触れると、私自身気が付けば前向きになっていることもしばしばです。

長くなってしまいましたが、以上で今回のコラムを終わりたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!!!

司法書士・行政書士事務所 Wille

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