第4回コラム ~【即時取得】法律の不思議!?無から有が生まれる

民法に規定されている驚きのルール!


法律を学んでいると、時折自分の常識とは離れたルールにぶつかることがあります。
今となれば腑に落ちているものであっても、初めてその知識に触れたときには驚いてしまってしばらく理解ができず、苦しい思いをすることもしばしばです。
理解に苦しむ驚きのルール。
私にとってその筆頭だった民法のルールが【即時取得】です。

ただこの【即時取得】というびっくりルールですが、理解することで民法がどのような考え方をもとに作られているかが見えて来ます。
恐らく民法が試験科目にある資格試験であれば、どの資格試験であっても頻出知識であるこの【即時取得】について今回のコラムでは書きたいと思います。


【即時取得】って一体どんなルールなんだろう?


条文と具体例をまずは確認。


即時取得は民法の第192条に規定されています。

(即時取得)

第192条

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

条文だけ読んでもなんのこっチャイナですね。
具体例を挙げて説明したいと思います。

(ここから先の具体例は完全にフィクションです)

登場人物はAさん、Bくん、そしてCさんです。

Aさんは女性です。
そしてBくんはスタイリストをして生計を立てている男性です。

ある日、Bくんが友人であるAさんの家に遊びに行きました。
Aさんの家はそれほど広く無いのですが、その代わりにAさんはたくさんの洋服を持っていました。
家賃ではなく私服にお金をかけるタイプだったのです。
洋服に縁が深いスタイリストのBくんから見てもそれは中々のラインナップでした。

Bくんはあることを思いついてAさんにこう言いました。

「この服と、あとこれとこれ、1週間ほど貸してもらえない?」
と。

実はBくん、その週末にある撮影の現場に入ることが決まっていて、女性モデルのCさんのスタイリングをすることが決まっていたのですが、その撮影に使う衣装がまだ揃えられていなかったのです。
見たところ一般的サイズであるAさんの洋服はCさんの洋服サイズとも合いそうだったので、もしAさんから洋服を借りられるのであれば、クライアントに提案できる衣装パターンも増えるしいいのでは無いかと。

Aさんはどれもお気に入りの洋服だったので、最初は渋っていました。
ただBくんの話を聞いているうちに自分の洋服が撮影に使われるのも悪くないなと思い始めました。
そしてちゃんと返す前にはクリーニングにも出してくれるとのことで、最終的にはBくんの要求を飲むことにしました。
もしかしたらAさん、Bくんに対して友情以上の感情があるのかもしれません。

さて、撮影当日。
借りた衣装のおかげもあり、撮影はとてもうまくいきました。
クライアントも大満足の出来栄えで、スタイリストのBくんも今夜は美味しいお酒が飲めそうです。

撮影が終わって片付けをしていると、モデルのCさんがBくんに話しかけてきました。

「今日はありがとうございました!すごくかわいい洋服ばかりでテンション上がっちゃいました!さすがスタイリストさんー!センスの良い洋服いっぱいお持ちなんですね!」

そう言われたBくんはかわいいモデルさんに褒められたのが嬉しくて、ついこんな事を言いました。

「お疲れ様でした!もし気に入った衣装で買い取りたいのがあれば言ってもらっていいですよ。僕の物だったら売ってあげられる物もあるので」

と。
するとCさん

「え?じゃあ最後に着たのいいですか?あれあまり見たことないデザインですごーく気に入っちゃって!」

さて、皆さんお気づきの通り最後に着たというその衣装はBくんがAさんから借りてきたものでした。
Cさんはまるでもうそれが自分のものになったかのように喜んでいます。
横では大切なクライアントがにこやかに事の成り行きを見守っています。Bくんとしてはどうも断りづらい雰囲気です。


BくんはCさんにいくらであれば買うかと聞いてみました。
すると思っていた以上の価格。
それならば受け取ったお金をAさんに渡せばいいだろうと思い、BくんはそれがAさんの衣装であることは告げずに売ってしまいました。

さて、洋服を返す日になってその事実をBくんから知らされたAさんは激怒しました。
Bくんを信頼して貸した自分の大切な大切な洋服を勝手にモデルの子に売ってしまうなんて!
しかもその洋服、もうお店で売っているものではないのです。

「お金なんかいらないからを洋服を取り返してきて!!!」

泣きながらBくんに訴えたのは洋服を失った悔しさだけなのか、それともBくんに対して友人以上の感情を抱いていたからなのか。
とにもかくにもBくんはCさんに連絡をして洋服を返してもらえるようにお願いしなければならなくなりました。

(勘違いで売ってしまったと伝えればきっと大丈夫だろう。)
しかしことはBくんの思うように簡単には運びませんでした。
Cさんに電話をかけて事情を話したBくん。
そこで思わぬことを言われてしまいます。

「事情はわかりましたけど、私がお金を払ってBさんから買っている以上、私のものってことになるんじゃないですか?それに調べてみたらこの服ってもう売ってないみたいで、私も返したくないんです」

Bくんは困りました。
自分の軽率な行動でAさんを困らせてしまった。。。

さてさて、Aさんは自分が持ち主であることを主張して、Cさんから洋服を取り返すことができるのでしょうか?
そしてAさんの恋の行方は!?


少し長くなりましたのでここから先の検討は次回のコラムで書きたいと思います。(次回コラムへ続く)

司法書士・行政書士事務所 Wille

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